渡辺容子さんの『魔性』です。5年ぶりの新作ということで期待して読み始めました。

魔性
魔性
posted with amazlet on 06.12.21
渡辺 容子
双葉社
売り上げランキング: 157832
おすすめ度の平均: 3.0
3 ちょっとがっかり

主人公は母子関係に悩み、恋人や同僚にひどい仕打ちを受けて会社を辞めて、生きる望みを失いかけて引きこもり症になってしまっていた29歳の珠世。そんな彼女を救ったのは川崎トラヴィアータというJリーグ2部のサッカーチームと、内山ありさという高校1年生の少女でした。珠世は熱烈なトラヴィアータサポーターとしてスタジアムに通い始めていました。
彼女たちのお目当てはトラヴィアータのエースストライカー、宍戸黎生。宍戸の誕生日には珠世とありさで特別の横断幕を飾ろうと息巻いていたのですが、その横断幕を持ってくるはずのありさはスタジアムに姿をあらわしませんでした。ありさはその試合の時間、渋谷で何者かに殺害されていたのです。
しかし殺害されたはずのありさから、サポーター仲間の携帯電話にメールが入ってくるのです。
落ち込む珠世は、同じマンションの住民のミチルに励まされ、ありさを殺した犯人さがしをはじめますが、その犯人探しは困難を極めます。そしてその調査の過程で、サポーター仲間たちの隠された素顔が明らかになっていくのです。
やがて明るみになる、ありさの家族の奇妙な行動、そして珠世に背後から忍び寄る犯人の魔の手。そして意外な犯人が珠世の前にあらわれ、そして意外な事件の真相が明らかになります。


ありさを殺した犯人探しや謎解きだけではなく、主人公の珠世が立ち直る過程や、関係者が見えない部分でいろんな事情を抱えてていたり、善人のように思っていた人たちも様々な裏の顔を持っていたり、サッカーを応援している人たちの一体感だったり、ベートーベンのピアノソナタのエピソードだったり・・・・、とにかくいろんな要素がいっぱい詰まった作品です。
一冊の作品に多くのことを盛り込むのは渡辺容子さんの作品の特徴なのですが、この作品に限っては消化不良。
サッカーのサポーターを題材にする必然性もまったく感じないっていうか全然関係ないし、サポーターたちの裏の顔も事件とはぜんぜん関係なかったりする。とにかく余計なことが多すぎて、この本のストーリーの本質、つまり事件そのものの謎解きと珠世の再生という、とても大事な部分が全然生きてこないのです。いろいろ詰め込むことで事件の謎解きがいろんな困難に突き当たることを表現したかったのかもしれないけど、それにしても無駄が多すぎます。言い方を変えるならメリハリがない。前半と後半のぞれぞれ1/4程度だけで十分お話が成立しちゃうんです。
後半1/4あたりで急に事件の真相に迫っていくんだけど、それもなんか「いきなり」って感じがしちゃうし、真犯人についても何の伏線もなくいきなり登場してくるから、謎解きを楽しもうとしている読者からすると、何によそれっていう感じがしちゃうのです。
物語のテーマは「裏の顔」っていうことなんでしょうけど、それも散漫な印象したもてなかったです。
タイトルの「魔性」というのも、後半にいきなり登場する重要人物を象徴する言葉なのだけど、物語全体を象徴する言葉ではないからピンとこないし・・・。

それと、横断幕のことをファンは「ダンマク」といって略して呼ぶんだけど、小説の中では「弾幕」って書かれてるんです。これは完全に誤字。ちょっとお粗末でした。


久しぶりの新刊ということで期待した分、落胆も大きかったかな。
だから、厳しいとは思うけど、評価は★★☆☆☆。